鈴姫
華京は頷き、体を放り出すようにして玉座に腰を下ろした。
「確かにそうだ。私は三国をまとめたい。でもこれは、我等が利益のためではない」
「………」
「わかってもらえないかもしれないが」
華京が少しだけ、さびしそうに笑ったのを香蘭は見逃さなかった。
「……聞かせてください」
華京は頷いた。
そして何かを想うように目を瞑り、口を開く。
「我等が望んでいるのは国の統一ではない。昔のように戻るなんていうのは無理な話だ。
人も、文化も、街も、昔とはまるで違う姿をしているのに、昔と同じ方法で豊かさを求められるわけがないのだ。
…どこへ行く秋蛍」
華京の咎めるような声に振り向くと、秋蛍は扉に手をかけて今まさに出て行こうとしていたようだった。
「話が長くなりそうなので」
何の悪びれもなく淡々とそう言ってのける秋蛍に、華京はひくりと口元を動かしたが、諦めたようにため息をついた。
「…わかった。香蘭だけ聞いていてくれればいいからお前は散歩でもしてこい」
「あなたの話は長いので」
「早く出て行け」