鈴姫
香と鈴が宣戦布告の書状を鏡に出したのはそれから三日後だった。
当たり前のような顔をして玉座に座る香王を、宝焔はじっと見つめた。
それに気づいた香王は、不思議そうな顔をして宝焔のほうへ身を乗り出した。
「どうしたのだ宝焔?」
「いえ、何も」
宝焔は、にこりと笑い、首を横に振った。
香王はそれ以上探ることもなく、深く座り直した。
今日は機嫌がいいようだ。
「今日は鈴国の珀伶王子がお見えになる。もう来られる頃だと思うが、丁重にお迎えするのじゃぞ」
「はい」
宝焔は頭を下げ、王のもとを離れた。
会釈する国王付きの従者の前を通り、廊下に出た。
そして鈴の王子という人物について思いをめぐらせた。
どのような者なのか。
果たしてその人物は、香に危害を加えないのだろうか。
「宝焔王子」