鈴姫





香と鈴が宣戦布告の書状を鏡に出したのはそれから三日後だった。




当たり前のような顔をして玉座に座る香王を、宝焔はじっと見つめた。

それに気づいた香王は、不思議そうな顔をして宝焔のほうへ身を乗り出した。


「どうしたのだ宝焔?」


「いえ、何も」


宝焔は、にこりと笑い、首を横に振った。


香王はそれ以上探ることもなく、深く座り直した。

今日は機嫌がいいようだ。


「今日は鈴国の珀伶王子がお見えになる。もう来られる頃だと思うが、丁重にお迎えするのじゃぞ」


「はい」


宝焔は頭を下げ、王のもとを離れた。


会釈する国王付きの従者の前を通り、廊下に出た。



そして鈴の王子という人物について思いをめぐらせた。




どのような者なのか。




果たしてその人物は、香に危害を加えないのだろうか。





「宝焔王子」



< 86 / 277 >

この作品をシェア

pagetop