鈴姫


考えながら歩いていたため、急に声をかけられてはっとした。


いつの間にか自分の部屋まで来ていたことに驚きながら、声をかけてきた大臣に振り返った。


「珀伶王子がお見えになられましたぞ。」


「わかった。すぐ行く」


宝焔は部屋に入ることもせず、戸に伸ばしかけていた手を引っ込めて広間へ向かった。



客人はまず広間へと案内される。


王に謁見する前に話をするのが宝焔の役目だった。



広間に入ると、二人の男が待っていた。


二人とも鈴の国を衣服を着ていたが、宝焔はすぐにどちらが珀伶王子かわかった。


彼が醸し出す雰囲気から、珀伶王子で間違いないと確信し、黒髪の男のほうに手を差し出した。


「あなたが珀伶王子ですね。僕はこの国の第二王子、宝焔です。」


彼は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに応えた。


「宝焔王子。噂どおりしっかりしておられる」


宝焔はいいえ、と首を振り、それから聞きにくそうに口を開いた。


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