鈴姫







「どうしてこうなった」





願いの鏡の前に座る香蘭の隣で、秋蛍が不服そうに漏らした。


「私、大丈夫ですから。どうか秋蛍様はお部屋にお戻りになられて……」


「それができたらとっくにそうしてる。できないから、ここにいるんだ」


ますます不機嫌になる秋蛍に、香蘭はもう何も言わない方がいいことに気が付いて口を引き結んだ。


彼はすこぶる機嫌が悪い。



というのも、華京が秋蛍に命令を下したためである。



それは香蘭を守れ、という命令で、宣戦布告を受けた今、香蘭に何かあっては困るということで秋蛍に護衛の役目を言いつけた。


鏡も守れるし一石二鳥だろうというのが華京の考えだった。



ただ、気持ちはありがたかったが香蘭は少し迷惑だった。


こんな気分屋で不機嫌なことが多い男と、いつもいなければならないのである。



神経をすり減らしてしまいそうで、香蘭はため息をついた。



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