マイ・フェティッシュ
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わたしは彼が笑った時に出来る小さなえくぼが好きだ。
でもえくぼフェチというわけじゃない。
その証拠に、今までいろんな人のえくぼをみてきたけれど、ときめいたことはただの一度も、ない。
わたしは彼の胸の奥にすとん、と落ちてくる低めのトーンの声が好きだ。
しかし低めのトーンの声が好きというわけじゃない。
わたしは彼の天然パーマのふわふわした癖っ毛が好きだ。
けれども癖っ毛が好きというわけじゃない。
ちなみにわたしは密かに彼のことをアスパラ系男子と呼んでいる。
彼は年下だ。
だからといって年下が好きというわけでもない。
甘えたいタイプなんです、結構。
ドット柄のシャツを着こなす彼は本当にかっこいいと思う。
……いや、さすがに、そうはいっても毎日その柄の服を着られるのは嫌よ?
彼の指の爪は形がすごくよくて、好き。
料理上手なところも好き。
たまにお弁当作ってきてくれるし。
少し色素の薄い、ブラウンの瞳も好き。
パンっ、と空気を割るような笑い方も好き。
Vネックからちらりと覗く鎖骨も好き。
電車で吊革につかまってるときの二の腕も好き。
考え事がまとまらないと知らず片目を閉じちゃう癖も好き。
必ず車道側を歩いてくれるところとか。
人が混雑してると黙って手を取ってくれるところとか。
耳たぶのやわらかさとか。
可愛い小物に共感してくれるところとか。
映画で泣いちゃうところとか。
運動が結構得意なわりに身体は固いところとか。
雨の日に髪がはねるのを案外気にしちゃうところとか。
猫を見かけると近寄って、でもすぐ逃げられて軽くヘコんじゃうところとか。
好き。
でも、それは、彼だから。
つまるところわたしは――
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