おにいちゃん。
おにいちゃんに言われるがまま…
あたしはおにいちゃんの部屋にきてしまった。
何気なくカーテンを開けると、
そこには
とても綺麗な星空が広がっていた。
「おにいちゃん、電気はつけないで」
「…?うん」
今夜は満月だった。
「綺麗…」
「そうだな…」
あたしはふと、さっきの話を思い出した。
「ねぇ、今、何時?」
「…21時59分。」
「そっか…」
時がたつのは、
すごく早い。
あんなに愛しあってたことが、
まるで嘘みたいだ。
もちろん
あたしは今もおにいちゃんが大好きだけど…
「嘉穂」
背後から名前を呼ばれ、振り向こうとしたときにはもう、抱きしめられていた。
「…おにいちゃん」
「俺…やっぱり無理だよ…」
「へ…?」
「今日限りでお前を忘れるなんて…できねぇよ…」
「…。」
「別に、忘れなくてもいいんじゃねぇの…?俺には…お前を忘れるなんて…」
「…そんなこと、いわないでよ…」
「…」
「あたしはもう決めたのッ…おにいちゃんはおにいちゃんなんだよ?!」
「そんなのわかってるよ!!」
「じゃあ忘れてよ…。あたしのこと忘れてよ!!」
「それができねぇっていってんだよ!!」
あたしを抱きしめるおにいちゃんの腕に力が入った。
「…あたしだって忘れたくなんかないよッ…」
「もう、黙れ…」
あたしが目を閉じる前に一瞬だけみたおにいちゃんの顔は、
涙でぐちゃぐちゃに濡れていた…