花恋-はなこい-
そんなことを言いながらも、

母親はお菓子作りが得意で、

独身の頃は

カルチャースクールの講師を

勤めていたほどだ。


真由は母親が作ってくれる

お菓子が大好きだ。


「いっただっきます」


クッキーを一口かじると、

なんだか胸のモヤモヤが

少しだけ解消される気がした。


「ねえ、真由。

 その指輪って、彼から?」


母親の言葉に真由は

びくんと反応し、

思わず咳き込んでしまった。


真由は右手の薬指に

はめている指輪を見て、

こくんと頷く。


「けいくんから、

 誕生日にもらったの……」


“未来を約束してるんだ”


そう言いかけたが、

今の真由にはとても

言い出せなかった。


「そうなのー。

 香坂君と本当、仲良いのね」


笑顔でそういう母親の姿に

真由の気持ちは複雑になった。




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