花恋-はなこい-
教室にいる皆が

その声の方を向く。


右手を真っ直ぐ

高らかに挙げながら

蒼がにっこりと笑顔で立っていた。


「藤岡君。

 どうしましたか?」


早乙女先生はやはり静かに、

蒼へ声を掛ける。


蒼はさらににやりと笑いながら、

「それ、俺が

 立候補してもいいっすか」

とさらりと口にした。


思ってもみなかったその言葉に、

教室内が賛成の意味を込めて

大きな拍手にわき始める。


面倒なことを

引き受けてくれたという

クラスの思いが、

そのわれんばかりの拍手に

込められているようだ。


だが、早乙女先生は

冷静沈着に蒼へ答えをかえす。


「でも、藤岡君はまだ

 編入したばかり。

 代表としてはちょっと……」


しかし蒼は

早乙女先生の言葉を

かき消すように大きな声をあげた。






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