花恋-はなこい-
「香坂、お前……。

 真由ちゃんのこと

 散々放っておいて、

 今更何言ってんだよ」


蒼が圭輔を睨みつけながら

じわりじわりと寄ってくる。


圭輔は逃げようとも

近付こうともせず、

抱きしめている真由を

かばいながら蒼に視線を

合わせ続ける。


「そうかもしれないな。

 でも、今の真由の言葉で、

 ようやく俺の気持ちが

 わかったんだよ。」


「なに今更言ってんだよ?

 お前は翠とくっついただろ」


圭輔の言葉に

面白いといわんばかりに

笑いながら蒼が言う。


静かな体育館に

蒼の笑い声がケラケラと響く。


「あの時の……。

 あの時の俺は、

 どうかしてたんだ」





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