花恋-はなこい-
ずっと指から外されてはいたが、

実はこうしてずっと

持ち歩いてくれていたことに

真由は驚き、

そして嬉しくなった。


圭輔は真由の手を取り、

手のひらにそっと指輪を置いた。


「もう一度、

 俺につけてくれないか?」


そう言う圭輔の顔が

なんだかバツが悪そうな表情を

浮かべている。


今までのことを思い返し

申し訳なく思っているのだろう。


そんな不器用なところが

真由の心をくすぐる。


「うん」


真由は小さく頷き、

圭輔の右手にそっと触れた。


そして確かめるように

ゆっくりと薬指にそれをはめた。





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