花恋-はなこい-
黒ぶちメガネから覗く

あの柔らかい表情。


その姿を

見られなくなると思うと、

真由は小さく

溜め息をついた。


「そうだな。でも、

 俺らより、もっと

 寂しいと思ってる人、

 いるんじゃないか?」


圭輔の言葉に真由は

杏奈の姿を思い出す。


そうだ、杏奈だ。


今まで当たり前のように

学校にいた聡史が、

今日を境に

いなくなってしまうのだ。


学年は違えど

同じ校舎内にいるという安心感が、

これからもうないのだ。


「杏奈……。

 きっとすごく寂しいよね」


真由の言葉に

圭輔がこくんと頷く。





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