花恋-はなこい-
圭輔とB組の教室前で別れ、

真由は教室へと入り

自分の席へと向かった。


バッグを机の上に置き、

ふと隣を見る。


やっぱり今日という日は

複雑なのだろう。


杏奈が机に伏したまま

ぴくりともしない。


真由はそっと

杏奈の方へと歩み寄り、

壊れ物を扱うように

肩を叩いた。


「杏奈。おはよ」


真由の呼びかけに

少しだけ体が動いたものの、

返事は返ってこない。


やっぱり話しかけるのは

やめた方がよかったかな……


そう思い、

真由は自分の席へと座った。


と同時に、横から

今にも消えてしまいそうな

小さな声が聞こえた。


「おはよ、真由」


その声の方を振り向く。





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