花恋-はなこい-
真由の母親は

圭輔を笑顔で出迎えてくれた。


緊張のあまり

表情が硬い圭輔を、

いつものように優しく

家の中に通した。


ダイニングテーブルには

珍しく可愛らしい花が

生けられている。


圭輔が来ることを訊き、

真由の母親が前日に

用意していたものだった。


リビングの出入口近くの席に

圭輔と真由が並んで座る。


2人に向かい合うように

真由の父親が

無表情のまま座っている。


キッチンから

4人分のお茶をトレーに乗せて、

真由の母親が

にっこりと笑顔で出てきた。


「喉、渇いたでしょ?

 お茶どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


目の前に置かれたお茶を

圭輔は早速手に取り、

軽く口にした。


そしてふうっとゆっくり

息を吐いた。






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