花恋-はなこい-
掲示板の前は

たくさんの人で

溢れかえっていた。


いつもは登校するのが遅い人も、

今日ばかりは

新しいクラスが気になるのか

すでにこの集団の中にいた。


真由は文系クラスを

一つずつ確認する。


A組から順番に目を通す。


すると意外にも早く

自分の名前を見つけた。


3年A組。


そのまま真由は

A組の名前に蒼の名前がないか、

強く心の中で祈りながら

確認し始めた。


「……ない、名前がない」


2,3回一つ一つ

確かめながら見たが、

A組の名簿に蒼の名前は

見当たらなかった。


「よかった……」


真由はそれまで

全身に入れていた力を

ふうっと抜いた。


これで蒼に

絡まれることもなくなる、

そう思うと心からホッとした。


しばらくして圭輔が

真由の元へとやってきた。


その表情は柔らかく

真由の心を落ち着かせた。






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