花恋-はなこい-
「行こう」


圭輔の合図で、2人、

守衛室へと足を進めた。


「こんにちは」


目尻にシワの入った

優しそうな守衛さん。


その表情に

少しだけ緊張がほぐれ、

圭輔は口元を緩めると、

カバンの中から

婚姻届を取り出し、

守衛さんの前に差し出した。


「婚姻届、

 提出したいのですが……」


圭輔の声が少し震えている。


目の前に差し出された届を

一通り黙認した守衛さんは、

圭輔と真由へ視線を向けると

目を細めて、

「はい、確かに。

 おめでとうございます」

と言った。


真由と圭輔は

小さくお辞儀をすると

守衛室をはなれた。





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