ダイダロスの翼
大きな天幕の中には、机とイスが用意されている。


トールはどっかりとイスへ座ると、机の上へ手書きの地図を広げた。


「地理は大体覚えてるよな?

ここが現在地、ここに研究所、こっちに町がある」


トールが大まかに確認する。

3人とも、この島については上陸する前にかなり調べ上げていた。


準備は万端である。


「今回の潜入の目的は、銃の密輸」


トールの声が、天幕の中で響く。


「町の住民に、研究への反抗手段を与える。

最終目的は、『住民の、住民による、住民のための反乱』を誘発することだ」


過激派人権保護団体、ダイダロス。

活動資金は武器や薬物の売買。

人助けのためなら、自分たちの手が汚れることもいとわなかった。


言葉を切ると、トールは祈るように目を閉じる。


「彼らの未来に、光あらんことを」


レイノルドはじっと地図上の町を見つめたまま、復唱した。


……俺は住民を助けだす。
そう、かたく信じて。


「……光あらんことを」



< 10 / 58 >

この作品をシェア

pagetop