ダイダロスの翼
……生い茂る木々、フェンス、トール。行く手をはばむものが多すぎる。


敵、規則、常識。

何にも縛られずに住民を守ることができる力が欲しくて、わざわざ電脳化までしたというのに。

母国イギリスでは電脳化は違法であり、レイノルドは帰国すれば犯罪者である。


「今は、こらえろ」


トールはもう1度、言い聞かせるようにそう言った。


レイノルドの全身に、歯痒さが広がる。

だが今まで、短絡的なレイノルドが、トールの思慮深さに助けられてきたことも事実だった。


「……それで住民が、本当に助かるのなら」


トールは力強くうなずく。


「もちろん。

今まで1度でも、俺が間違ったことがあったか」


「テストはいつも満点だ」


「そうだとも」


自信たっぷりのトールを、レイノルドは信じることにした。



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