ダイダロスの翼
『町』から少し離れた、白亜の研究所最上階の一室。


研究施設所長である平憲成(たいら のりしげ)は、研究の資料に囲まれながらパソコンへ打ち込みをしていた。


年齢は50~60歳程度。

背は低く、黒髪はすっかり薄くなっていた。


乾燥した手で論文をまくり、ふたたびパソコンへ目線を移す。

キーボードをたたく硬質で細かな音が、資料だらけの空間へ楽しげに響いた。


繊細なリズムを刻みながら、画面上で文字が踊る。


彼はそうして大量の研究成果を全世界へ発表し、社会へ還元しているのだった。

大勢の被験者、自然かつ詳細な観察データを備えた『研究島での研究』は、世界中で様々に役立てられている。



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