ダイダロスの翼
派手な銃声が耳を打つ。


マリーナは射撃の衝撃に思わず目をつぶってしまったらしい。

黒髪に埋もれた顔を上げ、ぎゅっと閉じた目をおそるおそる開けて、彼女はがっかりしたようにつぶやいた。


「……銃って難しいのね」


鼓膜に残る快音とは裏腹に、監視カメラは憎たらしくフェンスへ居座っている。


「目をつぶっていたら当然だろう」


「だって私、武闘派じゃないもの」


すねたように口をとがらせるマリーナを尻目に、レイノルドはホルスターから自分の銃を抜いた。

銃を扱った経験は皆無だが、不安はないようである。


「俺は目なんかつぶらない。

撃つ対象はちゃんと見る」



――検索、「射撃管制ソフト」。
――ダウンロード開始。
――インストール完了。


無駄のない動きで銃を構え、なめらかに引き金をひく。


響いた銃声に再び目を閉じたマリーナは、目をあけるとにまりと笑った。


「さすがはレイノルド。

電子頭脳を持っているだけあるわね」


フェンスの上でふんぞり返っていたカメラは跡形もなく砕けていた。

破片が暗い森の闇へ吸い込まれていく。


「これも実力のうちさ。

俺には覚悟があるんだ」


頭に響く激痛を無視して、レイノルドはそっけなく答えた。



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