意地悪LOVER

キス強盗




五月。ポカポカして、過ごしやすい気候。そしてすがすがしい朝。


あたしの大好きな人はきっと今頃はまだ朝練の最中。
大好きなサッカーを一生懸命がんばってる姿をあたしは一人歩きながら思い出す。


想像するだけで、顔が緩んでしまう。


ダメダメ!こんな道端で顔を緩ましてたら、誰に見られるかわかんないじゃん。

パシパシっと顔を軽く叩いて少し気合いを入れる。


そして再び学校への道のりを歩き始めようとしたときだった。



『相沢ひかり…ちゃん?』

『何か落としたよー?』


後ろからまったく聞き覚えのない声に呼び止められて、あたしは振り返る。


そこに立っていたのは、明らかにガラの悪い男達。いわゆる不良ってやつ。
そしてその男が手に持っていたのは、あたしの名札。普段はつけないし、持ち歩いてないんだけど、今日は特別要る日だったから、持っていたんだ。


「あ、名札っ!」


最悪っ!よりによって名札を落とすなんて…!
朝から変なこと考えてるからだよ~!!


心の中でそう叫びながら、男達から名札を取り返そうと近づく。


『おおっと!タダで返すとか思ってる?』

「…あ、ありがとうございます…」

いやいやながらもお礼を言って、名札を取ろうとすると


『ダメだよ~。お礼は何かじゃなきゃ』


そう言って、肩をもう一人の男にガシっと掴まれる。



…何かって事は…物!?
そんなの、今あるわけないじゃんかー!!



「は、離してっ!」

『えー?俺らと遊ぼう?』

『そうだよ、それで返してやるからさっ!』


女のあたしの力が男達に敵うはずもなく、あたしは男たちのされるがまま。もうどうすれば良いのか、あたし自身頭が混乱していて何も考えられなかった。



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