意地悪LOVER
「…んっ…はぁっ…」
玲皇君のキスは、嫌い。
全然優しさを感じれないし、荒い。
あたしの思い描いていたようなキスとは遠くかけ離れてる。
まるでキスであたしの想いを崩すかのような、奪うようなキス。
「お前は今日から俺の物。…"彼女"…だからな」
キスの合間に囁く玲皇君。その言葉は鎖のようにあたしを縛る。
心は身動きできないくらい、息苦しい。頭の中には愛しいあの人の姿が遠のいていく…。
「はぁっ…!はぁ…。おい、玲皇っ!」
「…何んスか?先輩…」
部室にはただ一人、玲皇だけが残っていた。
「ひかり見なかったか?…携帯にかけてもつながらなくて…」
「…掃除してる最中に用事できたって言って、帰りましたよ」
たやすく嘘をつく玲皇。
その瞳は何かを企んでいる。
「…そ…か。ありがとな…」
「あ、先輩!」
部室から出ようとした大地を引き止める玲皇。
「…大地先輩って…ひかりの事好きなんスか?」
「…!おいおい、ひかり"先輩"くらいはつけろよ。ひかりはお前の先輩だぜ?あぁ見えてもな」
「話、そらさないでくださいよ?」
「…!」
玲皇の意味深な態度に、ようやく何か異変を感じた大地。
「…俺は……、…好き、じゃない…」
「へぇ~…?」
納得したように頷く玲皇に、大地は不快を感じる。
玲皇の態度は相変わらず余裕を持っている。
「…なら、先輩。」
「…?」
「…俺が、あいつのこともらっても…文句はないですよね?」
「!!」
外は、朝と違って曇り。
この季節には珍しい肌寒い風が吹き荒れて
何かの前兆を知らせていたー…。