意地悪LOVER
「あの~。そろそろあたしここにきていいかな?」
しばらく大地と沈黙が続いて気まずくなった時、ちょうど良いタイミングに麻衣がうどんと一緒に戻ってきた。
「あ、うん!ごめんねっ…」
「ワリっ…。別に居てくれても全然大丈夫だったんだけど…」
「あー、もう良いって!実際外から見ればかなり深刻そうだったから!」
笑いながらまだ残ってるうどんを頬張る麻衣。
あたしも早く食べなきゃ、うどんが冷めちゃう!
一瞬大地の存在を忘れてあたしはうどんを吸い上げる。
「うまそーじゃん!俺にも一口っ」
そう言って、あたしの目線にあわせてしゃがんであーんと口を開ける大地。
う…わっ…!こ、これっていわゆる…!!
そうだよね!?あの噂の彼女が彼氏に食べさせる…あれだよね…!?
いそいでうどんを掴んで、大地の口元へ運ぶ。
大地は慌てるあたしと目が合うと、目元を優しく緩めて自分に迫ってくるうどんを一口でしゅるっと食べた。
…食べた。
大地が…あたしのうどんを…
…食べた!!
信じられないこの幸せ展開に、あたしの心臓は超スピードで脈を打つ。
「…おいし?」
「うん!やっぱ俺うどん派だなっ!」
「あ、あたしも!」
意外なところで接点が!
どうしよ…。あたし今死んでも良いかも。
だって、大地と…!!
はっと気付いて横を見ると、麻衣があたしをニヤ~っと笑いながら見ている。
「…えっと…!そろそろ始まるよ、授業!!」
あたしはワザと思い出したように机をバンっと叩きながら立ち上がると、そそくさに食器を流しへと持って行った。
後ろで、玲皇君があの冷たい鋭い瞳であたしを見ていることも知らずに…。