意地悪LOVER
時刻はあっという間に放課後。
昼休みの幸せな時間とは打って変わって、憂鬱な時間。
だって…、玲皇君に嫌でも会ってしまうから。
それでもあたしはなるべく玲皇君から逃げているのだけれど。
今だって、ボール置き場でボールの掃除。
…玲皇君に…会いたくない。
そう思って、ため息をついたときだった。
「…逃げてんじゃねぇぞ」
と少し怒った声と同時にあたしの頭にボールがドカっとぶつかった。
「いっ…!」
頭を抱えて後ろを振り返ってみると、そこにはちょっと繭をピクピク動かして怒っているように見える玲皇君の姿が。
「…玲皇…く、ん…」
「よぉ」
手をヒラヒラさせて、あたしに手を振りながら近づいてくる玲皇君。
「…れ、練習は?」
「俺はマネージャーの指導係だから…教えなきゃ」
「い、いらないよ!もう一人で出来るし…」
後ろから迫ってくる玲皇君の雰囲気をすごく体中で感じる。
変に緊張しちゃう、それは何でかな?
…またキスされる。そう思うから?キスなんかされたくないのに。心はどこか期待してるの?
「ちげぇよ。俺が教えなきゃなんないのは…もっと別のこと」
「え…?」
意味深な言葉に驚いて振り返ると、玲皇君の顔は目の前にあって近づいてきたかと思う
と急に玲皇君はその綺麗な顔をあたしの首元に落とした。
そして、軽く。だけど力強くあたしの首元を吸った。
「いたっ…」
一瞬のことだったけれど、その一瞬の痛みはあたしの体中に響いた。
「…絶対これは隠すなよ?」
玲皇君に後ろから首元を支えられ、あたしは部室にあった鏡に顔を向けられた。
するとそこには…首元に何か赤いアザのようなものが出来たあたしの姿が映し出されていた。