意地悪LOVER
その瞬間だった。
あたしの中からずっとこらえていた涙が溢れてきた。
「いやぁっ…!い、…やっ…!」
どうしても頭から大地が離れないの。分かってるよ。大地があたしを見ていないことくらい。
だけど、体だけは綺麗でいたいの。
急に激しく抵抗しだしたあたしに、玲皇君は驚いて上からあたしを見下ろした。
「…泣いてんの…?」
「っく…。いや…、いやだよぉ…」
見下ろしている玲皇君の下であたしはただ泣くばかり。
玲皇君に物になる。そう決めたのに。
大地の彼女にはなれないって分かってたのに。
「…」
しばらくあたしを見下ろしていたかと思うと、玲皇君は小さく舌打ちをしてあたしの横へと寝転がった。
「…嫌。どうしても…嫌なの…」
「何回も言わなくっても、分かってるよ。泣いてるくらいだし」
大きなため息が横から聞こえてくる。
やっぱり玲皇君はあたしの体にしか興味がないんだ。
あたしのために抱いてくれるんじゃない。自分が抱きたいから抱くんだ。
そう思うと更に涙は溢れた。
「…」
あたしは涙をベッドのシーツで軽く拭きながら、起き上がる。
横にはまだ寝転がってる玲皇君が。
「…お前、時間大丈夫なの?」
沈黙を破ったのは玲皇君のその言葉だった。
意外すぎる言葉。
「…今何時?」
「…八時前」
「別に…大丈夫…」
でも、どうしよう?
玲皇くんの事拒否っちゃったわけだし、あたしは帰ったほうがいいのかな…?
ううん、帰るべきだよね…?
それに、また求められるかもしれない。
「…あたし…帰…」
「…お前、親とか兄弟は?」
帰ろうとしたあたしの腕を引っ張って、玲皇君はあたしを再びベッドへと座らせた。