意地悪LOVER
「…え?」
「…だから!家族構成は!?」
聞き返したあたしに、ちょっとめんどくさそうにまたそう言う玲皇君。
だって、意外なんだもん。玲皇君がそんなこと聞くの。
「お母さんとお父さんと…お兄ちゃん…だけど…」
「兄貴がいるんだ?」
「うん…。もうしばらく会話をしたことはないけど」
あたしのその言葉に、"え?"と言った表情であたしを見る玲皇君。
…お兄ちゃんのことは実際そうだし。
いつから話さなくなったのかな。
気付けば自然とあたしとお兄ちゃんには距離があったの。
「…親とは仲良いんだろ?」
「…仕事で常に出張…かな」
そう。だからあたしを心配してくれる人なんて一人もいないんだ。
もちろん、お父さんとお母さんが家に帰ってきたらその日の晩御飯は豪華だし、お母さんからのお土産もたくさんある。
だけど、次の日には魔法が解けたみたいに二人はまたいなくなる
寂しい?
そんな風にも思わなくなったね。慣れた、が一番ピッタリかな。
「…ひかり、すっげー幸せそうなのにな」
一度起き上がった体を再びベッドへ寝転がすと、そこで玲皇君は大きく伸びをした。
すると、机に乗っていたタバコが落ちる。
「…玲皇君…タバコ吸うの…?」
「…あぁ…これ…」
急に玲皇君の顔は暗くなって、そのタバコを面倒くさそうに拾う。
「…親父のタバコ。あいつ何でも俺の部屋に置いて行く癖があるんだ」
"うっぜー"といいながら、また机にそのタバコを置いた。
「…玲皇君は?」
「あ?」
「…タバコ…吸うの?」
あたしの言葉に玲皇君は軽く笑って
「吸ってたらどうする…?」
なんて聞いてくる。
「…え、えっと…」
「…そんな真剣に考えんなよ。バーカ」
とあたしの髪の毛をクシャクシャっとして、そう言った。
…あれ?玲皇君、優しい…?
そう思うのはあたしの勘違いかな?
「…運動選手はタバコなんか吸わないの」
玲皇君はタバコを見つめながら、静かにそう言った。