意地悪LOVER
あんな事がさっきあったっていうのに、玲皇君はあたしを家まで送ってくれる、そう言ってくれた。
なんだか今日の玲皇君はおかしいよ。
ううん、おかしいんじゃなくて優しいんだ。
じゃなきゃ、こんなことありえないもん。
変なの。
ただ無言で歩くうちに、だんだんとあたしが知ってる通りに景色は変わってきた。
家が近くなってきてるという証拠。
そして、家がもう目の前に迫ってきている。その時だった。
「…あ…」
玲皇君が急に立ち止まったことであたしはドンっと玲皇君の背中にぶつかってしまった。
「…いたた…。どうしたの?」
「…」
あたしが話しかけても玲皇君はなんとも返事もせずただ前をずっと見ている。
その視線の先が気になって、あたしは一歩前に出て見てみた。
「…大地…」
あたしの家の前にある電信柱に背中をもたれさせて立っている人。それは大地だった。
そうか、この姿を見て玲皇君は立ち止まったんだね。
「あっ…ひかり…と玲皇」
大地もあたし達に気付いて、気まずそうにこちらに向かってくる。
いつからそこに居たのかな…?
あたしの家の前にいるんだから、もちろんあたしに用事があるに違いない。
嬉しいような…辛いような…。
そんな気持ち。
玲皇君の顔をチラっと見てみるけど、その表情はいつものあのヘラヘラした表情で、その心境はまったく分からない。
いや、もしかしたらこの状況を楽しんでるのかも。
…だって玲皇君だもん。気まずいとかそんなこと絶対思ってないよ。