意地悪LOVER



応援する。


大地からのその一言で、周りの景色はあたしの視界から消えて真っ暗に。


自分が何者かさえも理解不能に。




応援するって、誰と誰を…?



「ひかり…?」



気付けば、大地が不安そうな顔であたしを見ている。


大地のそんな顔見ると余計辛くて、苦しくて。


自分は友達なんだって、そう思うしかない。



「っく…うぇっ…んっ…」




大地の前じゃ絶対泣きたくないのに、溢れて来る涙。

ごめんね。

泣いてごめんね、大地。


だけど今のあたしはこの涙の訳もしらない。

この涙を止める術さえ分からないの。




「ひかり?何で泣くの?」


大地はちっともうざそうな顔をしないで、優しくしてくれる。


あぁ、ダメだよ。


これ以上優しくしないでよ。




もっと甘えて、泣いちゃうじゃんか。




「…玲皇、呼ぶか?」


「…!!」


その名前に反応して、涙は自然と止まる。


別に来て欲しくないわけじゃない。


さっきだって意外に優しくて、スポーツに対しては真面目なんだって分かったし、見直した。


でも、今は大地に側にいてほしい。


そう思ってしまうの。



「やだよ…。っく…だい…ち…」


幼稚園児のように声を上げて泣くあたし。


恥ずかしい。

こんな自分を好きな人が見てる。




「ひかり…」




大地はまるで小さい子をあやすかのように


あたしの涙を指でそっと拭っていってくれた。



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