意地悪LOVER



そのままその人につれて歩かれること、約数分。
いい加減、肩を離してほしい。


「あ、あの!」

「ん?」

あたしが、意を決して立ち止まるとその人は少し驚いた顔であたしを見つめた。


「助けてくれて…ありがとうございました…!」


頭を深々と下げて、必死にお礼を言う。
ほんとにこの人がいてすごく助かった。あのままじゃ、あたし今頃どうなってたかわかんない…。


「お礼を言われるほどのことはしてないんだけど」


そう言って、男の人はあたしの頭を上げさせる。

今度はしっかりとその人と目が合う。
ドキンってした。…知り合ったばかりなのに。



「はい、ひかりちゃん」

そう言って、あたしの名前を呼んだかと思うとさっきまで取られていた名札を渡してくれた。


「あ、名札!…よかった…!ほんとにありがとう…!」

「…お礼か…」


ぼそっと男の人は呟いた。あたしには聞こえないような小さな声で。


「…え?」

「お礼なら、俺はこうするかなー」



男がそう言った瞬間だった。




急に頭をガシっと掴まれたかと思うと、あたしの視界は真っ暗に。


そして、唇には何か暖かいものが。





…キス…されてる…!



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