意地悪LOVER
「だ、大地!」
「びっくりしたよ…!真田からひかりが倒れたって聞いたときは…」
「えへへ…、ごめんね驚かせて」
そういうと、いやいや…なんて優しく笑いながら大地はあたしの隣に座る。
すると、不意にどうしても目が合ってしまう。
それと同時に抱きしめられた日のことを思い出して意識してしまう。
「…」
「…」
あたしと大地の間だけに、気まずい沈黙が流れてしまう。
どうにかしてこの空気…変えないと…。
だけど、思い出すとどうしても照れてしまう。
その時だった。
「…ひかり!ちょっと来い!」
あたしが雰囲気を変える暇も与えず、さっきまでじっと見つめていた玲皇君はあたしの腕を思い切り引っ張って部屋を飛び出す。
「…ちょっと…!玲皇君!?」
「…」
宿から外に出て、少し歩いたとこで立ち止まる。
あたりは夕刻のせいが薄暗い。
それに、湿気が多くて雨が一気に振り出しそうな天候。
「…ひかり、やっぱ何かあっただろ」
「へ?」
「…あいつと、大地先輩となんかあっただろ!?」
ドキン。珍しく真剣に見つめてくる玲皇君のまなざしに心臓が高鳴る。
あの日のことは言うべきなのか?
あたしの中の言いたくないという小さな反抗心がなかなか口を開けさせてくれない。
「何でそんなこと急に聞くの?」
「…すっげー気まずい雰囲気だしてたじゃん」
「出してないよ」
「出してた!」
答えてもすぐにかえってくる玲皇君の言葉。
その言葉にあたしはやっぱりひるんでしまう。
玲皇君からの問いかけに対してずっと答えずにいると、グイッと顔を玲皇君の方へと向かされた。
「…早く…言えよっ…!」
小さな掠れかかった声で玲皇君はそう呟くと、あたしの唇を激しく覆った。