意地悪LOVER




「見損なったよ、玲皇」

「…!」

先輩のその言葉に俺はゆっくりと顔を上げる。


「…お前なら、任せられると思った。ひかりのこと」

「…」

「…だけど、俺は間違えてたみたいだな…」


外は雨。部屋の中にはもう雨の降る激しい音しか響いていない。
あと音で響くのは、大地先輩の声だけ。


「俺…」

と、大地先輩が何か言おうとした時だった。



「ちょっと…!大地っ…!大変なのっ…」

そう言って、ひかりの友達の真田さんが俺達の部屋に慌てて入ってきた。


「真田!?どうしたんだよ、慌てて…」

「…はぁっ…はぁ…」

真田さんの様子からみて、相当慌てているみたいだ。


「…何か、あったんですか?」


俺が真田さんに一歩近づいて話しかけると、真田さんは顔を上げた。



そして


「…ひかりが帰ってこないの」


俺の瞳を見て、そう呟いた。





今日は本当の厄日かもしれない。


だって、おかしなことばかり起きる。
何もかも上手く行かない。

俺が今までしてきたことの天罰なのか?



違うだろ?俺は気にしなかった。誰に何が起ころうとも。
なのに、今は違う。確実に俺の中の何かが変わった。

ひかりを心配する気持ち。
俺の中にあってはいけない気持ちが次々に溢れてくるんだ。



だけど…そう思う心とは裏腹に、俺の体は真田さんのその言葉を聞いて冷たく凍ってしまったかのように動かなかった。



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