意地悪LOVER
…見つからない。
やっぱり、こんな俺には見つけることなんて出来ないのかな。
そう思ったときだった。
「…!」
少し先にある小さな小屋の屋根の下で雨宿りをしているのか、うずくまってるひかりを見つけた。
「…居た…」
俺はゆっくりとそっちの方向に向かって歩き出す。
もちろん、俺の目はひかりの姿を捕らえたままで。
きっとうずくまって泣いてるんだと思う。
見間違えなんて、するわけない。
だって、俺は何回もひかりを泣かしてきてるから。
どんな感じで泣くか、感覚で覚えてる。
「ひかっ…!!」
そう言って、ひかりに近づこうとしたときだった。
「大地っ…」
微かにそう呼ぶ声が聞こえた。
もちろん、ひかりから。
聞き間違え?
俺は行くことも出来ず、立ち去ることもできずただ立ち止まる。
「…ひかり、大丈夫か!?」
すると、違う方向から大地の走ってくる姿が見えた。
あぁ、そうか。そういう事なんだ。
やっぱり俺に人助けなんて向いてないんだ。
神様はそう言いたいんだろ?
だってそうじゃなきゃ、こんな仕打ちあって良いはずかないじゃないか。
ひかりを見つけて、ひかりの側に行くと何かが分かる気がしたんだ。
あの息苦しくて、曇った気持ちが晴れるような気がしたんだ。
大地はひかりに傘を差し出して、ギュッと抱きしめてる。
「…」
その姿はどこから見ても恋人同士のように見える。
ひかりの表情も落ち着いて、安心しきっている。
俺にはもう、この場に居ることは許されない。
前のようにまた、善人面してヘラヘラして…
さっき抱いた感情を、忘れるんだ。