意地悪LOVER
嵐と優しさ
…~ジリリリリリっ!
いつもの朝。いつもと同じように目覚まし時計が静かな部屋に大きく音を響き渡らせる。
「…ん~…」
ちょっと布団の中から顔を出して時計を見てみる。登校するまでにはまだ余裕がある。
もう少し。
そう思って再び布団に入った瞬間、頭がジンジンと痛む。
…これは…もしや!?
なんて風邪を期待して、布団から起き上がるとさっそく体温を測ってみる。
そして数分後。
「……36.5…」
いたって健康そのもの。
…おかしい。あんな雨の中ずっと外にいたのに風邪をひいてないなんて…。
健康にもほどがある!
平均体温を表示した体温計を恨みながらあたしはゆっくりと用意を始める。
学校に行きたくない。
もちろん、体がダルいのもその理由のひとつだけど。
一番の理由は玲皇君に会いたくない。
あんなことがあった後にあたしはどういう顔で玲皇君に会えばいいのか。
その答えがあたしにはまったく分からない。
玲皇君に無理矢理ヤられそうになったあと、あたしはとにかく玲皇君の顔を見たくなくて
とにかくその場から離れたくて、ひたすら歩きまわっていた。
でもやっぱり一人は寂しくて、誰かに会いたくなった。
強い雨が降り出して、でも帰るに帰れなくて。
そんな状況の中、あたしはただ雨がやむのをひたすら待ってた。
寂しくて、辛くて…誰かに助けを求めていて…。そうしたら、大地があたしを見つけてくれたんだ。
大地はあたしを見つけるとすぐに駆け寄ってきてくれて、傘を差し出して冷え切ったあたしの体を抱きしめてくれた。
心のどこかでは、玲皇君の姿を期待してた。
もし、ちょっとでも玲皇君に優しさがあるのなら。あたしのことを物と思っていないなら、助けに来てくれる。
そんな甘い期待をしてた。
でも、やっぱり玲皇君は優しくなんかないんだよ。