意地悪LOVER


結局大地はあたしの教室まで送ってくれて、"じゃ、また部活でな!"と軽く笑って去って行った。

もちろん、怒っていた理由は分からないまま。


でも、最後は笑ってた。
…あたしには、怒ってないのかな?

そうだと、いいんだけどな…。




そう考えながらあたしは自分の席へと向かう。
その途中に麻衣が駆け寄ってくる。



「ひかりー!やっぱあんた健康そのものなんだね!」

「…どういう意味かな」

「あんだけ雨に濡れといて、こんな元気なんてさ!」


"びっくりだよ!"

と笑って話す麻衣。


うーん、健康を褒められてるのか、それともあたしをバカにしてるのか。


どっちなのかな。



「いーでしょ。健康そのものがあたしの取り柄だし」


「あははっ!そーだったね」


二人一緒に席に着く。


「それより、朝から大地と登校!?」

「え、あ~…うん」

「噂の彼氏はどーなったのよ!」

「…分かんない。…彼氏っていうのかな」

「なんだそれ」


麻衣は困ったように苦笑した。


だって、さっき会ったけど。
話しかけられたけど。

挨拶をするわけでもなく、あたしの体を気遣ってくれるわけでもなく

ただあたしを見て何か言いたそうにしてた。


…もしかして、別れ話をするつもりなのかな。


そうなれば、嬉しい。


もし玲皇君があたしに飽きてくれたとするならば、あたしは玲皇君から解放されて自由の身。

もうあんなこと無理矢理されることもなく、あたしは大地のことを遠慮なく好きでいられる。



…だけど。



だけど、なんだろう?この気持ち。



なんだか、それを考えると胸がポカリと穴が開いたように寂しくなるんだ。


その穴の奥には、初めて玲皇君家に行った日のあの日の玲皇君が映ってるんだ。



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