意地悪LOVER

教室を出ると、あたしはその女の子達にさっきの教室から離れた空き教室までつれてこられた。




｢あたし、大地先輩のこと好きなんです｣



そして数人の女の子達の中心にいたなんとも可愛らしい女の子が目にうっすら涙を浮かべながら意を決したように呟いた。


｢…え？｣

｢でも、あなたは…好きなんですか？｣

｢あたし…？｣

｢大地先輩に告白しました。だけど、あたしはフラれました。好きな人がいるからって…｣

｢…！｣

｢…あなたなんですか？｣


ちょっと待って、待ってよ…！

一体何の話してるのか、まったく状況がつかめない…！




『でも、あんた玲皇と付き合ってんだろ？』


その女の子の取り巻きみたいな存在の女の子があたしに突っかかる。


｢…付き合ってる…｣


｢ならっ…！何で大地先輩とっ…!!｣


わあああっと泣き出す女の子。


『玲皇も手に入れて、今度は大地先輩もかよ!？』

『男好きも大概にしろよな！』


周りの女の子達から次々と浴びせられる罵声。

そんなの、あたしが一番知りたいの。
だって、急にあたしの世界は変わったんだから。

何でこんなことになるんだろう、って何回も思ったよ。



｢あたし、大地とは…何もないし…付き合ってない…！｣


声を体の奥底から絞り出してそう零す。
これは本当。紛れもない事実。

｢…でも、今朝だって仲良く…一緒にきてたじゃないですかっ…！｣

｢そ、それはっ…！｣


あたしが返す言葉に困っていると、


『謝れよ！亜矢に謝れ！』

隣から次々にそう言った声が聞こえる。


何で？どうして？あたしが何したの…？


さまざまな疑問が頭の中に飛び交っているけど、あたしは依然として口を開かないまま。



『…あんた…謝らないと…』


そう言って、一人の取り巻きが手を上げた瞬間だった。





バキっ…！！


と、教室のドアが大きな音を立ててその音を教室中に響き渡らせた。