意地悪LOVER
「…ごめん」
「…え?」
やっと溢れていた涙が引いたとき、玲皇君は気まずそうにそう言った。
「…何が?」
「…合宿の日…」
ポツリと呟く玲皇君の言葉にあたしの胸は高鳴る。
この教室に緊張が走る。
だって、あんなことがあったんだ。
あたしと玲皇君は普通に接せれる状態じゃなかったはず。
「…怒りに任せてひかりに怖い思いさせた」
「…」
「それに、大地先輩に聞いたよ。二人に何があったか」
「…!」
ドキンドキン…。
大地に聞いた…。それを聞くと更にあたしの心臓は早く脈を打つ。
もしかしてそのせいで二人は今日、あんなに仲が悪かったの?
それなら…それは、あたしのせいでもあるよ。
「…体、大丈夫だったの?」
「…うん」
驚くべき玲皇君からの言葉。
一体何があったというのだろうか。
数日前までの玲皇君なら絶対にありえない言葉。
また、あたしのことをバカにしてるんだろうか。
それともー…。
「大地先輩、心配してたから早く部活来なよ」
そう行って、教室を出ようとする玲皇君。
「っ…!」
待って、待って、待って。
頭でそうは思っていてもなかなか声に出来ないこの言葉。
あたしは玲皇君の服の裾を思い切り引っ張った。
「…ひかり?」
「……怒らないの?」
大地に抱きしめられた。
それを知ったんなら、玲皇君は怒らないの?
だって、前はあんなに怒ってた。
あたしと大地が話すたびに、もう話すな。そう言ってあたしにいつも怒ってた。
だけど、今はまるで逆。
それを認めたかのように玲皇君は優しいの。
あたしは玲皇君の瞳を見つめて答えを待つ。
すると、玲皇君はまたあの寂しそうで辛そうな笑顔で
「…もう怒ったじゃん」
そう零した。