意地悪LOVER
「…え?いない…?」


あれ?あたし確かにさっき玲皇君に会ったよね。
うん、間違いないよ。
助けてもらったもん。


なのに、大地…今いないって言った?


「…はははっ!ま、ダメならそれでいーけど!」

困ったあたしの顔を見て、大地はごまかすように笑ってあたしの元から去っていく。
あたしはまだ肯定か否定の返事をしていないのに。



「…あ、そうだ!」

あたしは一年生のサッカー部員の元へと走っていく。
玲皇君が本当にいないかどうか確かめなきゃ!


そう思い、一年のサッカー部員の中をキョロキョロと探してみるけれど、玲皇君の姿は一向に見つからない。


「マネージャー、何キョロキョロしてんすか?」


挙動不審なあたしを見て、クスクスと笑いながら話しかけてきたのは"秋岡 哲"君。

一年生の中じゃ玲皇君と一、二を争うほどのサッカーの腕前を持つ男の子。
もちろん、玲皇君ともすごく仲が良い…と思う。

でも、性格は真反対。

秋岡君の方が、優しいし面白い。
それにすっごく気が利くし、玲皇君とは大違いかも。


「玲皇君知らない?」

「玲皇っすか?あいつ、熱あるみたいで帰りましたよ」

「え?熱?」

「はい、何か朝からしんどそうにしてましたけどね。あいつ強がりだからな。そういうの誰にも言わないんですよ」


"バカですよね"と笑いながら話す秋岡君。



だけど、今はそんなことで笑える暇なんてない。
熱があるの?

玲皇君、あたしを助けたあのときもしんどかったのかな。

全然そんな風に見えなかったよ。
やっぱりあたしのことなんか頼りたくなかったから?

"彼女"とは思ってないから?



あたしは、大地が好きだけど。
玲皇君が嫌いなんだけど。


それを聞いたら、胸がズキンと…痛んだ。


勝手だよね。だけど、本当なの。
胸が苦しくて苦しくて…痛いんだ。




「…っ!大地、ごめん。本当にごめんっ!」



「あ、おい!ひかり!?」


気付けばあたしは大地に必死に謝って、鞄を手に掴むと学校を勢いよく飛び出していた。




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