意地悪LOVER
「…っひかり、何でここに来るんだよ!」
「何で熱のこと言わなかったの!?」
俺とひかりが声を発するタイミングはバッチリで。
二人して顔を見つめあいながらそう驚いた声で言う。
「っ…!ひかりには関係ねーだろ!つか、帰れよ」
「…っ!!」
俺がドアから離れてひかりに背を向ける。
冷たい言葉。今まで散々ひかりに吐いてきた。
今更なんだ、何俺…気にしてんだよ。
相手はひかりだぞ?
俺の方が明らかに優勢なはずだ。
何にビビッてんだよ。
扉はバタン…と閉まる。
帰ったのか…、そう思って俺はドアの鍵を閉めようと振り返った。
「…、おまっ…何でっ!!」
ひかりはまだそこに居た。
じっと俺を睨みつけながら。
「どうして?どうしてあたしは帰らなきゃだめなの?」
「…当たり前だろ?ここはお前がくる場所じゃないんだよ…!」
よりによって熱のあるこの日に。
熱があると全てが失われる。
言葉も、気持ちも、理性さえも。
「あたしは玲皇君の彼女なんでしょ?」
「…え?」
俺はひかりの突然のその言葉に顔を上げる。
だって、だって…まさかひかりからそんな言葉が聞こえるなんて…。
思ってもいなかったから。
「頼むからっ…!…俺、お前といたら…何か、イライラするんだよっ…!」
何なんだよ、このイラつき。
原因不明の胸の痛さ、辛さ、苦しさ。
ひかりを目の前にしたら俺が俺でなくなるんだ。
「…!それでも、…今は玲皇君病人なんだからっ!」
ひかりは俺を抜かして、俺の部屋へと上がりこむ。
「ちょっ…、マジかよっ…!!」
慌てて俺はその後を追いかける。