意地悪LOVER


「大地先輩っ!」


靴を履き替えて教室へと向かおうとしたとき、後ろから後輩に話しかけられた。


「あ、…たしか…佐々木さんだっけ…?」


この前俺に告白してくれた、あの佐々木 亜矢という女の子だった。


もちろん、俺にはひかりという片思いの相手がいるから付き合えるわけもなく断ったのだけれど。


「覚えててくれたんですか?嬉しいですっ!」

「そんなすぐに忘れないよ」


嬉しそうに笑う佐々木さん。その笑顔はすごく綺麗で可愛いと素直に思う。

この子を好きになれたら俺はどんなに楽だろうか。こんな可愛い子が俺を好きだと言ってくれたのに、俺はひかりを嫌いになれないんだ。

嫌いになるどころか、日に日に好きになっていっているんだ。



「今日も朝練だったんですか?」

「あーうん。もう朝から汗かくなんて最悪だよ」

「でも、運動って気持ち良いですよね!」

「うん。特に自分の好きなスポーツで汗かくのは嫌じゃないな」


"分かります!"なんて楽しそうに話してくれる佐々木さん。


だけど俺の頭の中じゃ、ひかりと玲皇の姿がその半分を独占していて何も考えられなくなる。


朝練があったということは、もちろんひかりと玲皇を朝から見なくちゃいけない、ということになる。


おかげで、朝から気分は最悪だし。


玲皇、部活辞めてくれないかな。なんてことまで考えてしまう。



「先輩!大地先輩っ!」

「あ、と…ごめん、なに?」


いけない。自分の世界に入りすぎて、佐々木さんのこと忘れてた。



「マネージャー、今からでも入っても大丈夫ですかね?」




佐々木さんのその言葉で、俺の頭の中には再びひかりの姿が。


俺の思考回路は一瞬ストップしてしまった。


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