パラサイト ラブ

―――龍ちゃんが怒りを私の中に吐き出すと、私たちは抱き合ったまま眠った。


心地良い温もりの中で、私は夢を見た。

ぐつぐつと音を立てながら湯気を立てる、おいしそうなお鍋。
それを囲んでいるのは、龍ちゃんと、ハナさんと、私。

私だけは隣り合って座らず、二人と向き合う形だ。


『龍二、春菊も食べなさい』


ハナさんが龍ちゃんの取り皿に緑の春菊を放り込む。


『やだよ…苦いから好きじゃない』


ふふ、龍ちゃん子供みたい。


『肉ばかりじゃだめ!』


ハナさんがしつこく怒鳴る。

…好きなものを食べさせてあげればいいのに、夢の中の私はそう思った。


『龍二の体を思って言ってるのよ?あなたに早死にされたら私っ…』


急に、両手で顔を覆ってハナさんが泣き出してしまった。

ああ、そうか。奥さんになったら、旦那さんの健康管理もしなくちゃならないんだ。

私って……ほんとそういうことに気が利かない。


『ごめん、ハナ…食べるよ』


龍ちゃんがそっと彼女の肩を抱き、二人は唇を近づけた。

そこでお鍋の湯気がもくもくと私を包み込み私はそれが目に染みて目にぎゅっとまぶたを閉じた。


目を開けた時にはもう、龍ちゃんもハナさんもお鍋もなにもかも消えた、真っ白な世界。



私はまた…ひとりぼっちになった。


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