パラサイト ラブ
そう思っても成す術はなく、私はひんやりとしたタイルの床に座って、入り口に立ったままの龍ちゃんをただ、見つめた。
「……腹、減ってないか?」
龍ちゃんは鬼になりきれないのか、優しい眼差しでそう聞いてきた。
「少し……すいた、かな」
「…何か持ってくる」
龍ちゃんは廊下に消え、しばらくすると車のキーを手の中で弄びながら戻ってきた。
「昨日買い物してないから手頃なものが何もなかった。買ってくるからそこに居て」
と、お風呂場の扉を閉めかけた…と思ったら、また顔をのぞかせてこう言った。
「朝乃、トイレは?」
龍ちゃん…いい人すぎるよ。前に私が恥ずかしい思いをしたこと、覚えてたんだね。
「……大丈夫」
私の答えを聞くと、龍ちゃんは今度こそ扉を閉めて外出してしまった。