パラサイト ラブ
「…もう、行ってもいいですか?」
「行くって…アテはあるんですか?住所がないってことは家がないってことでしょう?」
私は口を尖らせてうつむいた。
警察官って容疑者を尋問するとき以外もしつこいんだ…面倒な人に保護されてしまったな、と心の中で呟く。
「家はないですけど…いざとなれば野宿でも何でもします」
「その格好で?」
「これしか…ないですから」
膝の上で握りしめていた手で、スウェットをぎゅっと掴む。
これ―――結構、暖かいんだから。野宿くらい、大丈夫よ……
「あのねぇ、最近夜は冷え込むよ?その格好じゃ凍死してもおかしくない。」
急に敬語が消え不躾な言葉遣いになった警察官。きっと私を馬鹿な奴だと思っているんだろう。
でも仕方ないじゃない。私には帰る家も、頼る人も、あたたかな上着を買うお金もないのだから。