パラサイト ラブ
「しょうがねぇな……」
警察官はそう言って椅子から立ち上がると、ズボンのポケットを探って何かを取り出した。
チャリ、と音を立てて机の上に置かれたのは、銀色の鍵……
「俺んち、この交番出て左に行った二個目のアパート。三階の一番手前の部屋だから、それ使って入って。
なんも事件が起きなきゃ今日は日勤だから五時半には帰れる」
「―――要りません!」
私は警察官を睨んで、鍵を彼のほうに突き返した。
誰にも頼らないって決めたのに、その日のうちに男の人の家に上がり込むなんてできない。
それなら、凍死する方を選ぶ。この人の家に行ってしまったら、私はきっと自分を許せない。
頑なに鍵を受け取ろうとしない私に痺れを切らして、警察官は私の手を無理やり掴んでその手に鍵を握らせた。
「あのなぁ、俺一応警察官なわけ。こんな薄着で野宿しようとするか弱い女性を放っておくような性格ならこの職業にはついてない。
あんたに変なことしようなんて考えもこれっぽっちもない。信じられないなら俺の目を見ろ」