パラサイト ラブ

私は、恨めし気に彼を見た。

相変わらず、澄んだ目だ。確かに嘘はついてないだろう。


だけど……


「…親切にして下さってありがとうございます。でもいいんです、誰かを頼ってしまったら私はあそこを出てきた意味がない」


「……ほんっとに、強情な女だな」



警察官は呆れたようにため息をついた。でも未だに私の手を離してはくれない。

何をどう言えば、この人は私を解放してくれるんだろう……



「じゃあ…俺が提供するのは部屋と寝床だけ。食事の世話はしないし風呂も貸さない。
それならどうだ?」



強情なのはお互い様みたいで、彼はそんな案で私を言いくるめようとする。


でもそれなら、寄りかかったことにはならないのかな。
一晩、寝る場所を貸してもらうだけなら……



「うんと言うまで俺は引き下がらないぞ」



それにこんな調子では、私が折れるしかなさそうだ。


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