パラサイト ラブ
「そんなところに座ってたら寒いだろう、こっちへおいで」
そのとき、声を掛けてくれたのがホームレスのお婆さんだった。
優しさに飢えていた私は、導かれるままに彼女の家(家と呼べる代物ではなかったけれど、ピンク色の外観は他のホームレスの住みかよりは可愛らしく、中も清潔だった)にお邪魔し、一晩泊めてもらうことになった。
個人の事情を深く詮索することはホームレス同士のタブーであるらしく、私がなぜあんなところで泣いてたのか、お婆さんは何一つ聞いてこなかった。
だけど親切にしてもらってなにも話さないのは自分の気が済まなかった。
婚約者の家を出てきたということ、一刻も早く仕事を見つけたいということを、簡単に説明した。
お婆さんは私の背中をそっと撫で、
「仕事が見つかるまでここに居たらいい」
そう、微笑んでくれた。
太一さんのところを出たというのに、またこうして他人に助けられてしまった……
またしても一人では何もできない自分の無力さに気付かされて、私は泣きそうになった。