パラサイト ラブ
振り向くと神妙な面持ちの朝乃が立っていて、俺はなにか嫌な予感がした。
それを察したのか、朝乃が慌ててこう付け足した。
「出て行くとか、別れようとかそんなんじゃないの。これからもずっと、私は龍ちゃんと一緒に居る」
それを聞いて少し安心した。
だけど……じゃあ一体なんでそんな浮かない顔をしてるんだ?
俺は冷蔵庫を閉めて朝乃の方に向き直り、次の言葉を待った。
「今日の午後、病院に行ったの」
「病院?やっぱりまだ調子悪かったのか。薬とか、もらったの?」
「ううん……薬はむしろ飲んじゃダメっていうか……」
なんだか歯切れの悪い受け答えが気になる。
薬を飲んじゃダメって……ただの風邪じゃないのか?
ときどき過呼吸の発作も起こす朝乃だから、まさかと思って俺はおそるおそる尋ねる。
「朝乃、もしかしてなにか重い病気――――」
「……赤ちゃん」
部屋の空気の流れが止まったような気がした。朝乃の言葉を聞くためだけに、耳が研ぎ澄まされる。
「ここに、赤ちゃん居るんだって。龍ちゃんと、私の」
お腹に手を当てて、朝乃はしっかりとした口調でそう言った。