しあわせおばけ
ところで、コロッケを作ることになったものの、俺は普段、揚げ物料理をまったくしないから、フライヤーの扱い方から教えてもらわなくちゃいけない。
いや、その前に材料の買い出しも。
「スーパー行くけど、来る?」
財布をポケットに突っ込みながら聞くと、妻は首を横に振った。
「言い忘れてたけど、私、この家の敷地からは出られないの」
「えっそうなの」
「この世界に来る前に、運営委員会でそういう契約書を書かされたのよ」
「ああ…天国運営委員会だっけ…」
「そう、だからお任せするわ」
「って言われてもさ、何を買えば…」
何を買えばいいかわからない、と言いかけたとき、
ピリリリリ
リビングのテーブルの上の携帯が鳴った。
会話を中断して携帯を開くと、明日香が遊びに行っている家の番号が表示されていた。