しあわせおばけ
こんなのは、俺に言わせればつまらない嫉妬だ。
だけど怒らずにいられない、その気持ちに対して悪い気はしない。
戻って来ない妻の様子を見にリビングを出ると、閉じこもっている和室の扉が半分開いていた。
まるで俺が来るのを待っていたようで、思わず小さく吹き出した。
「おい、いつまで拗ねてんの。入るよ」
扉の隙間から中を覗くと、妻は仏壇の前で、膝を抱えて座っていた。
「そんなに怒らなくてもいいだろ、あれくらいで」
「違うの」
妻ははっきりした口調で言った。
「違うって?」
「違うの」
何が違うのか言わないまま、妻は膝に顔をうずめた。
口調とは裏腹に、泣いているように見えた。