しあわせおばけ
俺は26歳のとき、派遣の女の子と社内恋愛の末に結婚した。
結婚翌年には明日香が生まれて、仕事も順調で、何もかもが楽しい日々だった。
だけどそんな幸せは長く続かず、結婚から7年経った昨年、妻はがんで死んだ。
闘病生活は短くて、がん発覚から死ぬまでは、本当にあっという間だった。
妻の病気がわかったときから、覚悟はしていた。
それでも実際そのときを迎えてみると、ショックは思ったよりも強烈に俺の心に襲い掛かってきた。
でも、俺って律儀だなと自分でも思うけど、百か日の法要を済ませたとき、もう泣き暮らすのはやめると誓った。
それが残された自分のためでもあり、明日香のためでもあるから。
だけどそんな俺の思いとは裏腹に、同僚たちは俺を見て、
「カラ元気なんてやめろよ、俺たちにもっと頼っていいんだぞ」
と言ってくれる。