しあわせおばけ
妻の説明によると、未練型天国に行った人は、生きていた頃の世界、つまり下界を見ることはできない。
ただひたすら、自分の未練が果たされるときを待つのみの世界だという。
そして守護型天国は、下界を見たり、下界に行ったりすることは可能だが、人間と交流することはできない。
まれに霊感が強い人に見つかると、それがいわゆる、
「おばけ!」
になるのだそうだ。
しかし天使になってしまえばこっちのもの。
100パーセントではないものの、ある程度の人には姿が見えて、しかも会話もできる。
「天使は天国の街に出ることはできないけど、こんないいコトだってあるし、なってよかったって思ってる」
妻の顔は清々しかった。
「…俺まだ死んでないのに、天国の知識ばっかり増えちゃうよ」
冗談交じりに言うと、やっと空気が和んだ気がした。
妻も隣で、ころころと笑った。