しあわせおばけ
見えなかったら、なんてことがあるなんて考えもしなかった。
だって俺にはこんなにくっきり見えるし、だいたい幽霊じゃないって言ったのは妻本人なのに。
「誰にでも見えるわけじゃないみたいなの。だから確証はないわ」
「そんな今さら…」
「言わなかったっけ?」
「言われたっけ…?」
記憶を呼び起こしても思い出せない。
「ま、どっちにしても相沢くんは来るんだし、見えるかどうかは一か八かね。じゃあ私、今から新人さんの案内しなくちゃいけないから、とりあえず戻るわ。また後でね」
妻はあっさりそう言うと、ひらひらと手を振って消えた。
…新人さん、つまりまた誰か死ぬってことか。
いったい世界中では、1日、いや1分にどれだけの人が亡くなるんだろう。
妻はいつも忙しげで、その姿を目にするたびにそんなことを考えてしまう。
暇にこしたことない職業は、医者と警察と天使ってとこか。